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東京高等裁判所 昭和52年(け)27号 決定 1978年5月23日

申立人 堀川武

請求人 堀川武

訴訟代理人 我妻眞典 外二名

主文

原決定を取り消す。

申立人(請求人)に対し金二五万五、五三〇円を交付する。

理由

本件異議申立の趣旨及び理由は、申立人代理人三名が連名で提出した異議申立書及び申立人代理人茨木茂提出の異議申立理由補充書に記載するとおりであるから、ここにこれを引用するが、要するに、原決定が弁護人であつた者(以下、単に弁護人という。)に対する日当及び報酬として認めた補償額は低廉に過ぎて不当であり、弁護人の旅費について、国家公務員の場合に準じ支給しない旨判示してその補償を認めなかつた措置は違法であるから、原決定を取り消したうえ、相当額の交付を求める、というのである。

所論に鑑み、本件記録及び本案記録(当庁昭和五二年(や)第五号)を精査してみるに、原決定が各弁護人に対する日当及び報酬の額を認定するについて説示するところはすべて首肯することができ、その認定額はいずれも相当であると認められるので、これらが低廉に過ぎて不当であるとする論旨は理由がなく、採用できない。

次に、弁護人の旅費に関する所論について検討するに、原裁判所は、申立人(請求人)が各弁護人の旅費(公判期日及び検証期日に出頭するために要した鉄道賃、すなわち弁護人ら所属の法律事務所から東京地方裁判所、東京高等裁判所及び検証現場までの国電・地下鉄料金)を計上してその補償を求めたのに対し、弁護人の在勤地内からの出頭については国家公務員の場合に準じ旅費を支給しない旨判示して、その補償を全く認めなかつたことが明らかである。

ところで、刑訴法一八八条の六によれば、弁護人が公判準備及び公判期日に出頭するに要した旅費は、同法一八八条の二所定の国が補償すべき費用として認められ、その額に関しては、刑事訴訟費用等に関する法律の規定中の弁護人に関する規定が準用されている(同法律八条により証人等に関する同法律の規定が更に準用されている。)のであるが、もとよりこれらの規定には在勤地内からの出頭に関して何らの例外も定めてはなく、解釈上もこれを例外的に扱うべき余地はないものと思料されるのである。そして、無罪費用の補償を認める刑訴法一八八条の二以下の諸規定の立法趣旨に照らして考えてみても、弁護人の出頭が在勤地内からのものであるからといつて、国家公務員の場合に準じ、その要した旅費を補償の範囲から除外すべき合理的根拠を見出しがたいものといわざるをえないのである。したがつて、請求人が弁護人の旅費の補償を求め、その内容が妥当なものである以上、裁判所としては、刑訴法一八八条の六第二項が適用される場合を除き、前掲諸規定に則り、これを支給すべきであつて、支給するか否かにつき裁量の余地はないものと解するのが相当である。そうすると、右と異なる見解に立つて弁護人の旅費につきその補償を認めなかつた原決定は、この点において取消を免れないものというほかはない。

よつて、刑訴法四二八条三項、四二六条二項により、原決定を取り消したうえ、前段説示したところに従い、原決定の認定した金額二四万七、三一〇円に申立人(請求人)が弁護人の旅費として計上する金八、二二〇円(その内訳は原裁判所に提出された無罪費用補償請求書添付の計算書記載のとおりであつて、内容は相当であると認められる。)を加算した合計金二五万五、五三〇円を申立人(請求人)に交付することとし、同法一八八条の七、刑事補償法一六条前段により主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 木梨節夫 裁判官 三好清一 裁判官 柴田孝夫)

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